第103章 阿部明人

「公共の場なんだから、自由に出入りしていいんじゃないの?」有岡里穂は眉をつり上げて言った。

阿部明人は困ったように、少し先の看板を指さす。

「私有地です。招待がない方は立ち入り禁止」

その指の先を追って、里穂はようやく小さなプレートに気づいた。

「このホテルは阿部家の持ち物でして。ちょうど僕が管理を任されているので……」

里穂は一瞬だけ表情を止め、すぐに言い直す。

「失礼しました。邪魔したわね」

踵を返した、そのとき。

「有岡さんなら、このままいてもらって構いませんよ。おじいちゃんがわざわざ招待した方ですし」

その一言で、里穂の心臓がひゅっと縮んだ。

――どうして、そこま...

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